喉や食道の違和感、異物感<半夏厚朴湯>

喉や食道の違和感、異物感<半夏厚朴湯>

喉や食道の違和感、異物感に対する漢方薬

梅核気(ばいかくき)、咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)に対して用いられる有名処方で半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)があります。梅核気とは梅の種がのどや食道部に痞えたように感じること、咽中炙臠は炙った肉片が喉や食道部にあるように感じることをいいます。実際に喉や食道に異物があるわけではないため、何かを飲み込んだり、吐き出そうとしても解消されない場合がほとんどです。梅核気にはもちろんのこと、幅広い症状に用いられる半夏厚朴湯について解説していきます。

<喉の違和感と七情(しちじょう)>
漢方では七情という考えがあります。病気を引き起こす内因で怒・喜・思・憂・悲・恐・驚の七つの感情の変化をいいます。この七情はそれぞれ漢方の五臓と深い関りがあり、これらが喉の違和感の原因にもなっています。

<処方紹介>
半夏厚朴湯は半夏(はんげ)、厚朴(こうぼく)、茯苓(ぶくりょう)、生姜(しょうきょう)、蘇葉(そよう)から成ります。使用する際の目標として喉の異物感が有名ですが、これは精神的な要因が大きいと考えられています。漢方ではストレスがかかると気の滞りが生じて、臓器の働きが悪くなると考えられており、喉や食道部の筋肉の機能異常(知覚異常や痙攣など)につながっているととらえることができます。さらに胃の過緊張が生じている場合、食べ物が入ってきても胃の大きさがうまく変化せず、少しの食事量でもすぐに膨満感や苦しさを伴う場合もあります。

<効能・効果>
気分がふさいで、咽喉(いんこう)や食道部に異物感があり、時に動悸、めまい、吐き気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳嗽、嗄声(させい)。

<処方紹介>
処方全体として水の巡りを整える、利水作用があります。半夏、茯苓、生姜の組み合わせで小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)となり、悪心嘔吐、げっぷ、咳嗽、痰飲(たんいん)に対する基本処方が含まれています。痰飲とは水の巡りが悪くなって生じた病的な物質のことをいいます。ここに厚朴と蘇葉が加わり半夏と茯苓を合わせて抗うつ作用があります。半夏と生姜で吐き気や嘔吐を抑えます。厚朴には平滑筋の痙攣を抑える働きがあり、気管支の痙攣による咳を抑えます。半夏には咳を抑える働きがあります。