関節痛・筋肉痛<薏苡仁湯>

関節痛・筋肉痛<薏苡仁湯>

関節痛・筋肉痛に用いる漢方薬

水の巡りが悪いことで生じる関節痛や筋肉痛に用いられる処方で有名なのが薏苡仁湯(よくいにんとう)です。美肌や水いぼに対して用いることで有名なヨクイニンを主薬としていることからこの処方名になっています。

<巡りのお話>
私たちの身体は気(き)、血(けつ)、水(すい)の3つの構成要素が過不足なく巡っていることで健康的に活動できます。気というのは熱であったり、身体を動かす、臓器を働かせるエネルギーです。血は血液とほぼ同じ意味合いがありますが、身体に必要で働いている血液を指します。汚れて働いていない不要なものは血毒となり、除くべきものとしてとらえます。同じく水も身体の中で働きをもっている血液以外の水分であり、余計に溜まっていたり滞っている水は水毒として除く必要があります。巡りを考えたときに、私たち人間は体毛が少なく、皮膚を外気に露出した状態で生活しています。気温に対しては着るもので暑さや寒さを調節しています。その際に身体の中で生じる代謝熱は皮膚表面から水蒸気を発散することで気化熱として放出しています。身体を温める「気」が不足したり、適切な温かさと水分を運ぶ血流が悪くなるとこれらの循環が悪くなるため身体の中に代謝熱がこもり、病気になってしまいます。体表が冷えているとこれらの巡りのシステムが維持できなくなるため、適度に発汗することや、冷えを除くということはとても大切になります。

<処方紹介>
薏苡仁湯は麻黄(まおう)、当帰(とうき)、白朮(びゃくじゅつ)、薏苡仁(よくいにん)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)から成ります。一般に、関節痛や筋肉痛に用いられますが、患部に熱があったり、腫れている状態に用いられることが多く、関節リウマチのような関節疾患や神経痛にも応用される場合があります。痛みの中には入浴するなど温めることで痛みが緩和するものもありますが、薏苡仁湯で用いられる痛みにはそのような変化がないものが多いとされています。

<効能・効果>
関節痛、筋肉痛

<処方解説>
麻黄と桂皮と白朮で発汗と利尿作用があります。主薬の薏苡仁には消炎利尿作用のほか、鎮痛、排膿、末梢血管の拡張、抗ウイルス作用などがあります。当帰と芍薬には不足した血を補い、血行を良くする働きがあります。芍薬と甘草で芍薬甘草湯の処方となり、痙攣性の筋肉の痛みに用います。比較的慢性化した痛みに用いられることも多いです。