冷えから生じる下痢・腹痛 <人参湯>

冷えから生じる下痢・腹痛 <人参湯>

冷えから生じる下痢・腹痛に対する漢方

多くの方が秋冬の寒い季節や夏のクーラーのせいで身体が冷えてしまい調子が悪くなった経験があると思います。特に下半身が冷えてしまうとそこで冷えた血液がお腹に戻ってくるので下痢や腹痛に繋がる場合があります。冷えから生じる下痢や腹痛に用いられる有名な処方に人参湯(にんじんとう)というものがあります。

<漢方で大切な「冷え」について>
漢方では「証(しょう)」というものがあります。冷えからくる不調を寒証といい、悪寒(おかん)や発熱、頭痛、下痢などがあります。身体の様々な働きが低下することで生じる手足の冷えや慢性的な下痢なども寒証になります。冷えから生じる不調には原因が2つあります。身体の機能低下によるもの(内因)と、身体の外側のせいによるもの(外因)です。そして冷やされる場所も体表と内部の2つに分けることができます。

内部の冷え
下痢や腹痛が起こるのは身体の内部が冷やされることによるものが多いです。寒い場所で足が冷えてしまい冷たい血液となってお腹に戻ってくる場合や、単純に冷たい飲み物を飲んで内部が冷えてしまう場合もあります。一般に、冷え性で悩んでいる人は内部の冷えが起こりやすい傾向があります。

体表の冷え
寒い場所で手足が冷えて痛む、頭痛がする、腰痛になるといった状態です。肩こりやこむら返り、筋肉の痙攣やしびれ感を生じることもあります。一般に、水太りの人で起こりやすい傾向があります。

<処方紹介>
人参湯は人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、白朮(びゃくじゅつ)、乾姜(かんきょう)の4つから成ります。人参湯が効果的な冷えは内因である身体側の機能低下によるものや内部の冷えです。急に身体が冷やされると、それによって内臓まで冷やされてしまい、腹痛や下痢、嘔吐、みぞおちの痛みなどが生じる場合があります。これは消化管の運動が亢進してしまうために起こります。

<効能・効果>
手足などが冷えやすく尿量が多いものの次の症状:胃腸虚弱、胃アトニー(胃の働きが低下し、食物が長くとどまる状態)、下痢、嘔吐、胃痛に用います。

<処方解説>
甘草と乾姜は甘草乾姜湯の処方であり、身体の内部の冷えを温めます。
人参はみぞおちの痞えや痛みを解消し、滋養強壮します。
白朮は利水作用があり、下痢などの症状を治します。