冷えによる腹痛・胃痛・みぞおちの痞え・嘔吐 <大建中湯>

冷えによる腹痛・胃痛・みぞおちの痞え・嘔吐 <大建中湯>

冷えによる腹痛・胃痛・みぞおちの痞え・嘔吐に対する漢方

冷えからくる腹痛に用いられる有名処方で大建中湯(だいけんちゅうとう)があります。臨床では手術後の腸閉塞予防で用いられることもあります。急性・慢性問わず寒さや冷えの影響から起こるお腹のトラブルに使用されます。

<冷えと腹痛のお話>
身体の内部が冷えると腸の中のガスが血中に吸収されず、腹部膨満感を生じる場合があります。さらに腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)という食物を移送する動きが活発になり腹痛を起こすこともあります。お腹の壁が薄い方では腸の動きが外から見えたりします。お腹の壁が厚い方でも自分の腸がむくむくと動くことを自覚できることも多いです。腹痛のタイプとしては内臓の平滑筋が痙攣することによるもので、痛みに強弱の波があります。この痛みを疝痛(せんつう)と呼びます。

日頃から慢性的な冷え性がある方は寒冷刺激で痛みはじめ、また日頃の痛みがさらに増します。冷え性でない方でも急激に身体が冷やされた場合、腹痛になることがあります。このときに直接お腹を冷やしてしまうことよりも下半身が冷やされたことで冷たい血液がお腹に戻っていき、お腹が冷えてしまう場合が多いです。

<処方紹介>
大建中湯は山椒(さんしょう)、乾姜(かんきょう)、人参(にんじん)、膠飴(こうい)の4つから成ります。山椒と乾姜という身体を強く温める生薬が主薬になっており、滋養強壮と痛みに対応する人参が含まれています。山椒と乾姜はともに辛い味なので飴を入れることで辛みが緩和されています。手術後は腸の運動が麻痺したり、腸の癒着(ゆちゃく)によって腸閉塞が起こる場合があるためこれらの予防のために病院の手術後でも使用されることが増えており、有名な処方の一つになっています。

<効能・効果>
腹が冷えて痛み、ガスなどの腹部膨満感のあるものに用います。

<処方解説>
山椒と乾姜で身体の内部を温め、腸の痙攣や過剰な蠕動運動を抑えます。人参によって腹痛や胃痛、みぞおちの痞え感を治します。人参で気を補い、山椒と乾姜で気を巡らせます。膠飴は山椒の刺激を抑えることで胃酸が出過ぎるのを防ぐとともに急迫症状を緩和します。冷えからくるお腹のトラブルには人参湯や真武湯という処方も有名であるが、これらは利水剤が含まれているため下痢を伴うときに用いられます。大建中湯を用いる際の大便は下痢をしないことが多いです。