老化(不妊、フレイル)<八味地黄丸>

老化(不妊、フレイル)<八味地黄丸>

老化(不妊、フレイル)に対する漢方薬

誰もが避けることのできないこととして老化があります。現代ではエイジング(老化)に対して関心が高まっており、アンチエイジング(抗老化)というカタカナも一般的になりました。現代の加齢に伴う注目ワードとしては「不妊」と「フレイル」がその代表だと思います。八味地黄丸(はちみじおうがん)はこの両者にもよく用いられる代表的な処方です。八味丸(はちみがん)と呼ばれる場合もあります。

<子宝について>
子宝希望者の高齢化によって子宝に悩む夫婦が増えています。現在では5組に1組が不妊で悩んでいるとも言われています。不妊の原因には男女それぞれが半々で関わっていることが多く、決して女性だけの問題ではないことがわかっています。女性の生理周期を整えることはもちろんのこと、結婚年齢が高齢化している現代では女性は卵子、男性であれば精子の質を良くすることが大切になります。生殖細胞のアンチエイジングです。「補腎(ほじん)」という生殖機能を強化する漢方独特の考えから、八味地黄丸はこれらの問題に役立ちます。

<フレイルについて>
フレイルという言葉の定義は長々とありますが、簡単にいうと健康な状態と介護が必要な状態の間の状態です。基本的に、何もしなければ老化に伴い身体は弱くなっていくため、フレイルを経て要介護状態へと進んでしまいます。身体の代謝機能や骨筋を強化する八味地黄丸は高齢社会が抱える様々な問題を健康面から支えます。

<処方紹介>
八味地黄丸は地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)、牡丹皮(ぼたんぴ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、附子(ぶし)の8つの生薬から成ります。「丸剤」ですので、これらの生薬をハチミツで固めて作られたものが本来の剤形です。エキス剤になっているものと比較すると効能に大きな違いが出ることにも注意が必要です。一般に手足の冷えや足腰の痛み、泌尿器トラブルに用いられますが、子宝や身体の強化に応用されることも多い有名処方です。

<効能・効果>
疲れやすく、手足が冷たい、尿量が少ない又は多尿で時に口渇(こうかつ)がある次の諸症:下肢・腰痛、しびれ、加齢に伴うかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ。

<処方解説>
地黄と山茱萸、山薬は陰虚(いんきょ)に用います。「陰(いん)」とは身体を滋養する精(せい)・血(けつ)・津液(しんえき)のことで、陰虚とはこれらが不足している状態です。牡丹皮と地黄は虚熱(きょねつ)に用います。虚熱とは健康に不可欠な陰、陽、気、血が不足することで起こる様々な病的変化のことで、主なものとして発熱があります。地黄と山茱萸は泌尿器トラブル(遺尿、多尿、夜尿など)に用います。茯苓と沢瀉、附子は水の巡りを促す働きがあるため、加齢で衰えている腎機能を助けます。桂皮と附子は身体を温める作用と強心作用があり、陽虚(ようきょ)に用います。陽虚とは手足や胸腹部、腰の冷えをはじめ、疲れやむくみ、汗、息切れ、めまい、疼痛(とうつう)、透明あるいは色の薄い尿の多尿、下痢などをまとめて陽虚証といいます。