胃腸虚弱、食欲不振など<六君子湯>

胃腸虚弱、食欲不振など<六君子湯>

胃腸虚弱、食欲不振などに対する漢方薬

消化吸収の働きを底上げする有名処方に六君子湯(りっくんしとう)があります。胃腸の不調は大きく2つに分けて考えることができます。1つは胃の筋肉がゆるみすぎたり、蠕動運動(ぜんどううんどう)という食べたものを動かす腸の働きが低下している状態です。2つ目は緊張している状態であり、逆蠕動運動がおきたり、胃と腸の間の筋肉が過緊張になり食べ物が前に進んでいかず、胃の中がいっぱいになってすぐに食べれなくなる場合です。六君子湯は特に筋緊張の低下、ゆるんでいる場合に用いることが多い処方です。

<気虚(ききょ)と気滞(きたい)の胃腸との関係>
漢方では気(き)という概念があります。これは広い意味では自然界を創っている原始的な物質であり、狭い意味でいえば身体を動かすエネルギーです。この動力源である「気」が不足することで身体の様々な働きが低下することを気虚といいます。疲れやすいなどの症状が典型的な気虚の状態です。一方で気滞というものは気の巡りが滞ることで生じる状態であり、張っている感じや膨満感などが典型的な状態です。少し難しい表現をすると気虚は「働きの低下」であり、気滞は「働きの異常」でもあります。胃下垂のように胃が緩んで胃もたれや消化吸収の働きが落ちている場合は六君子湯が良く効きます。胃が痙攣して痛いなど、胃腸の緊張から起こる症状にはリラックスさせて自律神経を整えるような、気の巡りを整えるような処方が適しています。

<処方紹介>
六君子湯は人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)の8つの生薬から成ります。人参、白朮、茯苓、甘草の四つを合わせて四君子湯(しくんしとう)といいます。気虚に用いる四君子湯という代表的な処方が含まれており、胃腸での消化吸収を促し、食事から気の不足を改善していきます。半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜の五つで二陳湯(にちんとう)といいます。二陳湯は痰飲(たんいん)という水の巡りの不調から生じた病的な物質を除く基本処方であり、胃腸に溜まった余計な痰飲を除きます。六君子湯はこれらの二つの処方を合わせた効果が期待できます。

<効能・効果>
胃腸虚弱、食欲不振、疲れやすい、みぞおちがつかえ、貧血傾向で手足が冷たいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、胃痛、嘔吐、消化不良、食欲不振。

<処方解説>
人参と白朮、茯苓、甘草で四君子湯となり、気虚に用います。気虚は身体の働きの低下を指します。半夏と陳皮、茯苓、甘草、生姜で二陳湯となり、痰飲に用います。水分代謝の低下から病的物質が生じて痰飲となります。気の巡りを促す陳皮を含むことで、胃腸の蠕動運動を整え、吐き気や痰に対しては半夏を用います。胃腸の不調がある場合、単に働きが悪くなっているだけでなく、胃腸に余計な水が滞ってしまっていることも多く、六君子湯はこれらを解消する処方構成になっています。